三春レザーのものづくり
三春レザーは、福島県三春町の古民家工房から、手仕事の革製品をお届けしています。
主に受注生産(カスタムオーダー)を生業としております。
素材や金具などを職人が選定し、完成させた即納品の販売も行っております。
即納品は、職人自身が「これこそ良い」と思える仕上がりを追求し、
三春レザーの感性と技術を注ぎ込んだ一点もの。
一方、カスタムオーダーはご注文を受けてから、
お客様のご希望に合わせて仕様を調整し、ひとつひとつ心を込めてお作りしています。
三春レザーがなぜ「カスタムオーダー」という形を取っているのか——
それは「フルオーダー」とは製作の流れもリスクもまったく異なるためです。
フルオーダーはゼロから設計する必要があり、画面越しのやり取りでは仕様の認識にズレが生じやすく、責任あるものづくりが難しくなります。
現在は公式サイトでのオンライン販売のみとなっている関係上、
フルオーダーは承っておりません。何卒ご理解いただけますと幸いです。
大量生産では決して味わえない、手仕事の温もり。
そこに、三春レザーの職人が技術を注ぎ込み「MIHARU QUALITY(ミハルクオリティ)」と呼べる品質が生まれます。
革の選定から縫製、仕上げ、発送まですべてを職人とそのパートナーの二人で手がけ、
お客様にとって“いいもの”を、自信を持ってお届けしています。
オーダー品の製作状況によってお時間を頂き、多少お待たせすることになると思いますが、
MIHARU QUALITYと言われる「逸品」をお届けすることをお約束します。
コンセプト(概念)
- 信頼のバトンを渡すものづくり。
- お客様に長く寄り添う逸品。
- 共に歴史を刻む革製品。
三春レザーの作品は、ただの「モノ」ではありません。
職人の手を通して生まれた一つひとつに、技術と感性、そしてお客様への信頼が込められています。
使うほどに深まる味わいと、手から手へと受け継がれていく想い。
それが、私たちが大切にしている「ものづくりのかたち」です。
素材へのこだわり
命を受け継ぐ革だからこそ
革は、もともと命ある動物の一部だったもの。
だからこそ私たちは、素材としてではなく「命の恵み」として向き合います。
手に取った瞬間に感じる表情、香り、質感……その一つひとつに耳を澄ませながら、この革がどんな作品になれば最も輝くかを想像し、丁寧に仕立てていきます。
生きていた証として残る傷や虫刺されの跡、血筋やシワも、三春レザーでは“個性”と捉え、立派な作品として活かしています。
それらは、他にひとつとして同じものがない「命のかけら」。敬意を込めて選び、最後まで無駄なく使い切る——それが、三春レザーのものづくりの原点です。
主な取り扱い皮革一覧(2025年現在)
革種名 | タンナー / 原産地 | 特徴・加工方法 |
---|---|---|
クロムエクセルレザー | Horween社(アメリカ) | 牛革。油分が多く、耐久性としなやかさを兼ね備える。 エイジングが美しい。 |
昭南本ヌメナチュラル | 昭南皮革工業(日本) | 牛革。三春レザーが茶芯仕上げに染色。 芯通しではないため、使い込むと下地が現れる。 |
昭南多脂ベンズ | 昭南皮革工業(日本) | 牛革。油分をたっぷり含んだ重厚なサドルレザー。 ハリが強く、経年変化も楽しめる。 |
国産ヌメ革 | 主に姫路産 | 牛革。自然な風合いが魅力。 仕入れ時期により個体差あり。 |
シェルコードバン(クラシックブラック) | ROCADO社(イタリア) | 馬革。黒でも奥行きのある光沢。 希少かつ高級素材。 |
シェルコードバン | Horween社(アメリカ) | 馬革。世界的に評価の高いオリジナル製法。 張りと光沢が特徴。 |
ホースバット | MARYAM社(イタリア) | 馬革。バット部位。芯通し染めで深みのある表情。 経年でツヤが増す。 |
AMAZZONIA(アマゾニア) | La Perla Azzurra社(イタリア) | 牛革。バケッタ製法+シュリンク・プルアップ・裏処理加工。 生命力を感じる個性派素材。 |
粗断ち・本裁断(オールハンドメイド)
革には、一枚一枚異なる表情と個性があります。シワやキズ、血筋、繊維の流れ――それらすべてが、その革だけの“特徴”であり、“魅力”でもあります。
革には繊維の方向があり、それを無視して裁断してしまうと、使用時に伸びやすくなったり、耐久性が落ちてしまうこともあります。
曲がりやすい方向、伸びやすい方向、逆に張りのある方向もあり、部位によって特徴はさまざまです。
これらの違いは、経験からしか理解することができません。日頃から革と丁寧に向き合い、会話を重ねるように見極めていくことが欠かせません。
三春レザーでは、まずは全体を見ながら「粗断ち」を行い、革の流れや質を確認したうえで、最も適した方向と位置を見極めて「本裁断」へと進みます。
そして日本の伝統工具のひとつ「革包丁」を使い、すべての工程を“手裁ち”で仕上げていきます。
この工程は、MIHARU QUALITYを生み出すうえで欠かすことのできない大切な手法のひとつです。
手縫い
一目一目にしっかりとテンションをかけながら縫い上げることで、手縫いならではの強度と立体感が生まれます。
2本の針で糸を交差させる「サドルステッチ」は、片方の糸が切れても縫い目がほどけにくく、ミシン縫いに比べて格段に高い耐久性を持つのが特長です。
三春レザーでは、すべての縫製をこの手縫いで仕上げています。
磨き
革の“呼吸”に合わせる繊細な仕上げ
革製品の最終工程である「磨き」は、単に光らせる作業ではありません。
革の性質を見極め、適切な処理を施すことで、その後の耐久性や質感に大きな違いが生まれます。
特にコバ(革の断面)の仕上げは、使用する革の鞣し方法によって大きく変わります。
植物タンニン鞣しの革は繊維が密で磨きに適しており、時間をかけて丁寧に磨くことで深い艶が生まれます。一方で繊細でもあり、磨き過ぎると毛羽立ちやひび割れの原因になることも。
クローム鞣しの革は柔軟で滑りやすく、薬剤や熱の加減を誤ると仕上がりが不安定になるため、異なるアプローチが必要です。
そのため、三春レザーでは革質に応じて、様々な磨き剤を使い分けています。
水と糊をベースにした「トコノール」や「CMC」は繊維を固めながら自然な艶を出したいときに使用し、光沢を重視したい場合は専用のワックス系コート剤を薄く重ねて仕上げることもあります。必要に応じて、蜜蝋やオイル系の処理を併用することも。
このように、革の“呼吸”に耳を澄ませながら、使う道具も工程も都度変えるのが私たちのやり方です。
「見えない部分こそ、丁寧に。」
その積み重ねが、三春レザーの品質を支えています。
手染め(丘染め・ムラ染め・アンティーク染め)
三春レザーでは、素材の風合いを最大限に活かすため、革の表面に染料を何層にも塗り重ねる「手染め」加工を施しています。
使用する染料は、水溶性の染料を中心に、時間と手間をかけて丁寧に色を重ねていきます。
■ 丘染め
革の表面だけに染料をのせることで、芯は残したまま、色の深みと透明感を引き出す技法。ムラの少ない、滑らかな仕上がりが特徴です。
使用革:国産ヌメ革のナチュラル、昭南本ヌメナチュラル
定番色:茶芯ブラック
別注色(オーダー制):ダークブラウン、ダークグリーン、ダークレッド、ダークブルー
■ ムラ染め
染料を革の繊維に浸透させながら、あえて色ムラを残すように染め上げる技法です。丘染めよりも濃淡のコントラストが強く、よりワイルドでラフな表情が生まれます。
仕上がりは一点一点異なり、まさに “唯一無二の革” を楽しみたい方におすすめの染色です。
使用革:国産ヌメ革(ナチュラル)、昭南本ヌメ(ナチュラル)
備考:ムラ感の出方や濃淡の強弱は、革の状態や部位によって異なります。カラーバリエーションは製品ごとに調整しており、特定の色名は設けておりません。ご希望の色味がある場合は、オーダー時にご相談ください。
■ アンティーク染め
色の濃淡を強く出し、クラシックな雰囲気と奥行きを持たせた染色技法。刷毛や布での拭き取りなどを駆使し、独特な陰影をつけて仕上げます。
使用革:国産ヌメ革(タンロー)
カラー(すべてオーダー制):アンティークブラウン、アンティークレッド、アンティークブルー、アンティークグリーン、アンティークグレー
※すべての染め加工は、工程ごとに乾燥と確認を繰り返し、革の状態を見極めながら仕上げていきます。
既製品にはない、革の表情を活かした“一点もの”の仕上がりをお楽しみください。
金具のエイジング加工(有料オプション)
三春レザーでは、一部の真鍮製金具に対して、エイジング加工(経年風仕上げ)を施す有料オプションをご用意しています。
革と同様に、使い込むほどに味わいを増す“経年変化”を、最初から楽しみたいというお客様の声から生まれた加工です。
加工はすべて手作業で行い、パーツの形状や表面処理に応じて、研磨や酸化処理などを施しながら、使い込まれたような重厚な風合いに仕上げています。
対象パーツ(いずれも真鍮製)
- ジャンパーホック(既製品)
- 三春レザーオリジナルホック(7050番)
- ハトメ・小判カン
- 各種ウォレットチェーン
※素材はすべて真鍮製に限ります。
※加工の仕上がりには個体差がございます。
革と金具がともに味わいを深めていく──そんな一体感を楽しみたい方におすすめのオプションです。