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三春レザーが思う、クロムエクセルの魅力とその製法について


今回のブログ記事は、三春レザーの視点や考えをもとにした内容を含みます。
製作に関する手法や解釈は当工房独自のものであり、一般的な正解を示すものではありません。
ひとつの考え方としてお読みください。

クロムエクセルとはどんな革なのか

ホーウィン社について

アメリカ・シカゴに拠点を構える Horween Leather Company(ホーウィン・レザー・カンパニー) は、1905年創業の老舗タンナーです。創業から 120年(2025年時点) にわたり、家族経営のもとで伝統的な手法を守り続けています。

ホーウィン社を代表する革といえば、まず挙げられるのが シェルコードバン(Shell Cordovan)クロムエクセル(Chromexcel)。この二つは、同社の“二枚看板”ともいえる存在です。

シェルコードバンが馬の臀部(コードバン層)から採れる緻密な繊維構造と独特の艶で知られている一方、クロムエクセルは、牛革をベースにした厚みとしなやかさを持ち、より日常的に使いやすい革として世界中で親しまれています。

日本ではクロムエクセルといえば牛革を指すことが多いですが、ホーウィン社では 馬革(Horsehide Chromexcel) も取り扱っています。ただし、同じ馬革でも「ホースバットストリップ」と呼ばれる素材は、クロムエクセルとは異なるタンニンなめしの革です。どちらもホーウィン社製の馬革ですが、なめし工程が異なるため、性質や仕上がりがまったく違うものになります。



クロムエクセルレザーの特徴

クロムエクセルは、ホーウィン社を代表するオイルレザーです。革づくりの工程で「ホットスタッフド製法(Hot Stuffed Method)」と呼ばれる独自の手法を用い、牛脂・蜜蝋・魚油など、天然由来のオイルやワックスを複数ブレンドし、革を温めながら繊維の奥までじっくりと浸透させていきます。

なお、このブレンドの配合や製法の詳細は、ホーウィン社における企業秘密とされています。 三春レザーとしてもその領域には踏み込まず、公開されている範囲の情報のみをもとにご紹介しています。製造元の努力と信頼を尊重することが、素材を扱う者としての礼儀だと考えています。

この製法によって、しっとりとした手触りと高い耐久性、そして深い艶が生まれます。仕上がった革は少し重厚で、手に取ると柔らかさの中に芯を感じます。表面のオイルが動くことで、光の当たり方や使用状況によって表情が変化し、使い込むほどに艶が増し、色味に深みが出ていきます。

また、クロムエクセルはコンビなめし(Combination Tanning)で仕上げられています。クロムなめしの柔軟性・耐久性と、植物タンニンなめしの張りや経年変化の美しさを併せ持つことが、クロムエクセルの大きな特徴です。



三春レザーが思うクロムエクセルの印象

クロムエクセルは、作るたびに新しい発見がある素材です。ロットや部位によって厚みや油分の入り方が微妙に違い、同じ型紙でも仕上がりの印象が変わります。縫製の力加減や刃の入り方ひとつで、糸の沈み方やコバの表情が変わる繊細さがあり、難しさと魅力が同居しています。

完成したときの落ち着いた艶と重みはほかの革では得にくいものです。革が育っていく過程を想像しながら仕立てる楽しさが、この素材を選ぶ理由のひとつになっています。



製作に関すること

三春レザーでは、クロムエクセルをトラッカーウォレットだけでなく、ブランドを代表する主要な革素材のひとつとして位置づけています。キーケースやカードケースなどの小物類にも多く使用し、今後展開予定の鞄シリーズにも採用します。

クロムエクセルは重厚でありながら柔らかく、仕立て直後から手に馴染む質感が特徴です。特に鞄のような大きな製品では、使うほどに表情が豊かになり、年月とともに持ち主らしい味わいへと変化していきます。

一方で油分が多いため、裁断時の刃の切れ味や作業環境の温度・湿度には配慮が必要です。扱いやすい革とは言えませんが、仕上がりの存在感と質感の深みは格別で、長く愛用できる“育つ革”として、今後の三春レザーを支える中心素材と考えています。



まとめ

クロムエクセルは、ホーウィン社が120年以上守り続けてきた伝統的な革づくりの結晶です。牛脂や蜜蝋、魚油をじっくりと染み込ませる独自の製法によって、しっとりとした手触りと深い艶を持ち、使うほどに味わいを増していきます。

三春レザーでは、クロムエクセルを“仕立てる素材”としてだけでなく、革そのものが語る時間や質感を伝える存在として捉えています。一枚の革の中に、手作業のぬくもりと経年の美しさが共存する——その魅力を、これからも少しずつ形にしていきたいと考えています。

次回は、クロムエクセルを特徴づける「オイルブレンド」と「ホットスタッフド製法」について、もう少し深く触れていきます。革が持つ“生命力”の秘密を、製法の視点からご紹介します。


▶︎ 次回:三春レザーが思う、クロムエクセルのオイルブレンドと製法について(Vol.2)

この記事の内容について感じたことや、クロムエクセルに関して知っていること、使ってみた印象などがありましたら、ぜひコメントで教えてください。
皆さまの声が、これからの記事づくりの参考になります。

また、三春レザーや製作に関するご質問・ご意見も歓迎しています。
革が好きな方とゆっくり語り合える場所になれば嬉しいです。

三春レザー公式ストア店長

三春レザー公式ストア店長

福島県三春町の田舎町の古民家で愛犬とのんびり暮らしながら革製品をハンドメイドで製造販売している職人です。

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